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2004.7 July |
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| 特集 文学の授業のスキルアップ |
| 【実践提案】 |
文学の授業、私はこう展開する |
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視点に着目した小説の読み方指導 |
黒坂文男 |
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一 はじめに
国語の授業で、小説教材を学習する場合、作品をどのように読んでいくかが最重要課題であると考える。
小説は、想像力や感情に働きかけて具体的なイメージを心に描きながら、作品の世界を自分が体験したかのように読み味わうことができる。作品の世界に浸って、描かれている情景を想像したり、人物の気持ちに共感したりしてさまざまな思いを抱きながら、小説を読み進めていく。そして、実際に体験したかのように心に深くその作品の世界が印象づけられる。……そんな小説の読み方を授業で行っていきたいと考えている。そのための方法として、視点に着目した読みが非常に有効である。
二 視点に着目した読み方
視点は、一般的には(1)一人称視点、(2)三人称限定視点、(3)三人称全知視点、(4)三人称客観視点の四種類である。小説の表現を視点に着目して読むことにより、人物の心情や、情景を生き生きと具体的に味わうことができる。また、作中人物と同化して、作品の世界を自分が体験しているかのように読み味わうことが可能となる。
立原えりか「アイスキャンデー売り」(『現代の国語1』三省堂)で具体例を挙げてみる。この作品は、小説ではなく随筆であるが、作者である「わたし」が語り手となって、一人称視点で書かれた作品であると言える。「アイスキャンデー売り」を視点に着目して読む場合、重要なことは、「わたし」が作中にいて、「わたし」を通して、人物や情景が描かれているということである。ただし、作品をそのまま読むだけでは、作中の「わたし」は、意識されずに読んでしまいやすい。
「おいしいだろうな、食べてみたいな、と思いながら、遠くに立って、魔法の食べ物のようにきれいなアイスキャンデーを眺めました。」
この表現を読むと、当然作中に「わたし」がいることは明瞭である。作品の中で、「わたし」がどこにいて、何を見て、どう思ったかをとらえていくことにより、作品の世界の中に自分がいるかのごとく読み進めていくことができる。この作品では、「わたし」がその場面でどう思ったかは書かれていないが、読み手が、「わたし」の立場に立って想像することは可能である。
・「キャンデーを渡す時もお金を受け取る時も、黙ったきりです。麦わら帽子の下で、女の人の顔は無表情でした。」
・「お客がいなくなると、……三つのアイスキャンデーを、きちんと並べて地面に起き、隣にしゃがみこんで、しばらくじっとしていたあとで、女の人は立ち去りました。」
アイスキャンデー売りの女の人の表情や不思議な動作を「わたし」の目を通して見ていることにより、読者も「わたし」と同様に謎めいた人物として印象づけられるのである。「アイスキャンデー売り」は、作者である「わたし」の一人称の視点に着目して、作品の表現を読み進めていくことで、読み手は小学生の時の「わたし」になって、作中の出来事を体験したり、三十年以上たった後の「わたし」の思いを共有したりすることができるのである。
三 視点に着目した『卜ロッコ』の読み
『トロッコ』について、中学一年生の生徒に対して、作品をどう読んだかを明らかにするために、場面ごとの感想と全体的な感想など八項目にわたって詳細な感想を書かせ、その中で具体的に書いた生徒の感想一一二編について分析したことがある。
紙数の都合で、全体的な感想について述べてみる。感想の中でもっとも多かったのは、良平の心情がよく描かれていたという感想だった。一例を挙げる。「良平の気持ちが、トロッコに乗りたいと思い、次におもしろいと思い、不安になり、最後に心細くなったりといろいろ変化していくところがよかったと思います。」事件の展開とともに良平の心情が描かれているところがこの作品の特徴と言える。作品の中でもっとも印象に残った場面は、良平が一人で必死に帰るところであった。生徒の感想の分析から『トロッコ』の読みの重点は、読み手が良平の心情を自分の身になって体験できるかという点にあると考えた。そのためには、視点、特に良平の視点に着目した読み方が重要である。
まず、初めの場面とそれに続く「ある夕方」の場面では、「良平はよっぽどトロッコが好きなんだなあ。」といった感想が多い。
この場面を読み味わうには、読者は良平がトロッコにあこがれる気持ちに共感し、良平が無断でトロッコに乗り土工にどなられる部分の情景や心情をいきいきと想像できることが重要であろう。
そのためには、視点に着目してこの場面の表現をとらえる必要がある。『トロッコ』は三人称全知の視点と三人称限定の視点として良平の視点で描かれているところがある。
冒頭の良平が工事を見物に行ったトロッコの様子は、良平の視点で描かれている。この情景が、良平自身が見ているように描かれていることにより、読者は良平のトロッコにあこがれる気持ちに共感できるのである。
・・・・・・(以下、本誌をご覧ください)
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