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2005.9 September |
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| 特集 これからの時代に求められる国語力 |
| 【特別寄稿】 |
確かな表現力を育てる教師 〜ユーモア詩の場合 |
浅沼 茂 |
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はじめに
自己表現を可能にするような力は、どのように湧いてくるのであろうか、自己表現を可能にするような環境や教師の働きかけはどのようなものであるべきなのか、この主題にそくして本稿は考えてみよう。
一般に、書くことは、話すことより子どもにとって抵抗感が強い。作文を書きなさいと言うと忌避反応を起こす子どもはとても多い。事故を起こしたJR西日本の運転手の懲罰の一つが反省文である。このように懲罰的な意味合いをもつような作文に自己表現の手段としてより積極的な役割をもたせることができるのであろうか。このような問いに一つの解答を与えているのが、「ユーモア詩」である。
ユーモア詩は、自己の生活世界のイメージを特別視することなく、ふだんの生活の手足の運動の延長として表現する。いわば歯磨きをするような生活習慣として実践される。ユーモア詩は、社会的な行為を要求する。つまり、生活上の一こまの反応ではなく、うなずき、反論、かわしなどを子どもに要求する。そしてその場面を取り出すことを要求する。それは、いわば「仮想現実」の舞台の創出を期待するのである。その舞台は、辛い気持ちも明るい一こまに転換する意味の交換を可能にする場面なのである。子どもたちは、一種の遊びにも似た感覚で演技するのである。
「ユーモア詩」の事例は、ある小学校での実践記録である。この実践記録は、2002年7月18日にNHKで放映されたものである。増田修治先生は、授業が行き詰まると、ユーモア詩を始める。増田先生の著書には、以前、授業で行き詰まったとき、ある子どもの詩「お嫁さん」を読んだことが忘れられず、そのユーモアに触発されたということが書かれている。その詩は、ふだん何事にも「早く、早く」とせかされる子どもからの軽い反撃のような内容であり暗い世相を笑いによって吹き飛ばすという子どもの力は、子どもたちに勇気を生きる力を与えるものであったという。増田先生は、ユーモア詩には「大人と子ども、子ども同士の関係を結び直したり、結び変えたりする力」があることを発見したという(増田修治『笑って伸ばす子どもの力』主婦の友社、平成14年、10頁)。
(1) ユリさん
ユリさんは、家に帰るとお父さんがいつも待っている。お父さんは「何食べる」とユリさんに聞く。お父さんは重い心臓病を患っていて、ずっと家にいる。ユリさんの詩には、お父さんがたくさん登場する。家ではお父さんとのコミュニケーションの時間が多くとられていることがわかる。ユリさんにとって、お父さんはユーモアの中心である。お風呂に先に入って、抜け毛をそのままにするお父さん。詩を書いているときに、テレビで時代劇を見ながら、シーとだじゃれを言うお父さん。暗いイメージはほとんどない。
でも、ユリさんは、お父さんのことを詩に書いても良いかどうか迷っている。詩に病気のことを書いたら、お父さんがショックでどうにかなってしまうのではないかと悩んでいる。実は、書くこと自体が悩みの種なのだ。
増田先生の「今一番考えていること」という詩の課題に、お父さんのことを書いていいのかどうか、それが一番考えていることだから悩む。
増田先生は、子どものすべてを許す、すべてを受け入れることが大切だと述べている。それは、相手を傷つけたりするような場合は別であるが。
他の人がすべてを受け入れるということは、受け入れられる本人には結構苦痛である。なぜなら、自分にとっていやなこと、大切なことを自分の外に出さなければならないからだ。当人にとってそれは難しいことなのだ。小学校の中学年からは、内言語が発達すると言われる。他の人の陰口をする。相手の見えないところで自分のひがみややっかみをいって不満を解消しようとする。それを隠し、聞いてくれる人を探す。しかし、自分の主観的な思いを言葉にするだけでは、ただのおしゃべりである。ユーモア詩の場合、増田先生の言うように、場面の「アクセント」を大切にする。増田先生自身は、このアクセントを十分説明しているわけではない。しかし、このアクセントは、子どもにとっておしゃべりを詩へと跳躍させる重要な足がかりとなっている。
(2) 共同意識と解放
ユーモア詩の場合、そのアクセントは、「恥ずかしいけど言っちまおう」がテーマである。恥ずかしいことを言ってしまうことは、一つは、他者との秘密の共有という仲間意識の形成につながる。それによって一つの「共同意識」をもつ。また、言ってしまうことで自己の「解放」がある。この二つの効用は、何事にも換えがたい。増田先生の言うこの「解放」は、何を意味しているのであろうか。自己の心の中の悩みは、そのまましまってあると常に悩みである。でも他の人に打ち明けるとき、なぜかその悩みは反転する。不思議なものである。
・・・・・・(以下、本誌をご覧ください)
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