2006.01 January
特集 手紙の作文指導
【特別寄稿】  簡単に楽しく手紙を書かせるには 田上貞一郎
時代遅れだが現役選手

 「若い人は手紙一本、まともに書けない」と嘆く大人がいる。
 よく考えてみると、書けないのではなく、書く必要がないのではなかろうか。
 今や手紙は時代遅れの通信手段。古くからある作法がうるさく、書いた後もポストまで行かなければならない。着くのにも日数がかかる。電話、ファクス、パソコン通信(電子メール)のスピードには、とうてい勝ち目がない。携帯メールも全盛時代で、早くて安いと、いいことばかりだ。しかし大人社会において手紙は、まだまだ現役選手である。
 私の担当する保育科の学生は、卒業までに四回の学外実習をする。実習も大変であるが、もっと悩ませるのは事後の礼状である。少なくとも終了後一週間以内に便せん二枚程度の礼状を書いて出さなければ、実習が終わったことにならない。これが学生を実習以上に悩ませている。
 メールだけでなく、手紙の書き方を習得しないと社会人としては通用しないことを、生徒に認識させる必要がある一例である。

書かせるのが、習得への近道

 学生に「中学、高校の国語の時間に手紙を書いた記憶があるか」と質問したところ、「ある」は一割程度だった。書いたのを忘れている生徒がいるとしても、半数には届かない低率に驚いてしまった。
 手紙は書かせるのが、習得への近道だと思う。最低限の作法を教え、怖がらずに書くという習慣を身につけさせたい。時には、作法を間違っても、若いゆえに許されると思う。私のところに届く相当な地位の人の手紙でも、作法を忠実に守っているのは少ないくらいだ。
 たくさん書かせ「手紙って、簡単だ」と思わせるのが上達への第一歩だと思う。

進む手紙のマナー破壊

 私が前任校で教育実習を担当していたときの話。学生は中学校で実習するが、評価表は直送してもらうシステムで、「○○大学教務課行」と印刷した封筒を用意して持たせた。終了後、中学校から戻った封筒を見ると七から八割が「行」のままである。作法通りに「御中」と添え書きされているのはごく少数であった。
 これは、各種招待状の返信はがきにも言える。「行」のままのうえに「ご出席」「ご芳名」「ご住所」が直されないのも珍しくない。「芳」まで消してあるのは一割未満が最近の傾向ではなかろうか。
 マナー破壊が進むのを阻止する上でも、しっかりした指導が求められると思う。

手紙の簡単な書き方

 作法を覚えてしまうと手紙は難しくないが、覚えるまでが面倒くさい。

・・・・・・(以下、本誌をご覧ください)