2007.10 October
特集 全国的な学力調査に学ぶ―「知識」と「活用」
【特別論文】  「全国学力・学習状況調査」の目的と課題
国立教育政策研究所 教育課程研究センター学力調査官 三浦登志一

一 「全国学力・学習状況調査」の目的

四月二十四日に実施された「全国学力・学習状況調査」の目的は、次の二つである。

① 国の責務として果たすべき義務教育の機会均等や一定以上の教育水準が確保されているかを把握し、教育の成果と課題などの結果を検証する。

② 教育委員会及び学校等が広い視野で教育指導等の改善を図る機会を提供することなどにより、一定以上の教育水準を確保する。

このような目的が設定された背景には、義務教育の質を保証するための構造の改革を図るという考え方がある。

○目標設定と目標実現のための基盤整備を国の責任で行う(インプット)。

○市区町村・学校の権限と責任を拡大する分権改革を進める(プロセス)。

○教育の結果の検証を国の責任で行う(アウトカム)。

義務教育へのこれまでの国の関与は、検証の段階が不十分であった。その点を改善し、義務教育に対する国の責任が果たされているのかを適切に把握するために、「全国学力・学習状況調査」が実施されることとなった。

義務教育の構造改革という目的と併せて重要なものが、各教室での「授業改善」の視点である。「全国学力・学習状況調査」は、知識・技能等を実生活の様々な場面に活用する力や課題解決のために構想を立て実践し、評価・改善する力などにかかわる問題となっている。これは、学習指導要領で重視される力を子どもたちに身に付けさせるという国としてのメッセージを具体的な形で示すものである。こうしたねらいをもつ調査問題そのものや子どもたちの解答状況を分析的にみていくことで、日常的な授業とは違った視点からの《授業改善》を進めることが大切である。

二 調査問題作成の基本的な枠組み

調査問題は、主として「知識」に関する問題(「国語A」)と主として「活用」に関する問題(「国語B」)の二種類からなっている。

問題作成に当たっては、中学校学習指導要領に示されている三領域一事項全体が、「知識」の問題にも「活用」の問題にも含まれるようにした。その上で、各領域等の指導事項をバランスよく出題し、生徒の学力の状況を幅広くとらえられるようにしている。

また、問題形式は次の三つである。

① 選択式…複数の選択肢の中から番号・記号を選び解答するもの

② 短答式…語句や短い文、数値等で解答するもの

③ 記述式…自分で解答を練り、文あるいは文章で解答するもの

このうち、「記述式」については、過去の教育課程実施状況調査やPISA調査などの結果に基づいた「「自由記述(論述)」の問題を苦手としている」との指摘を踏まえ、次の三つの視点に立って出題することとした。

① 説明や解釈をする

文章、図、グラフなどに表されていることを読み取り、説明をしたり、解釈したりすることが中心となる記述

グラフから読み取ったことを書く問題(国語A7設問一)、広告カードの違いを説明する問題(国語B3設問三)がこれに該当する。

② 評価や批評をする

文章等を読み、主張の信頼性や客観性など、様々な幅広い観点から評価したり、自分の知識や経験と結び付けて建設的に批評したりすることが中心となる記述

「蜘蛛の糸」を題材として、作品の内容や表現を基に、構成に関して自分の考えを書く問題(国語B2設問三)がこれに該当する。

③ 感想や意見を述べる

文章等を読み、読んだことと関連付けて自分の感じたことや考えたことを分かりやすく述べることが中心となる記述

ロボットと共存する未来社会について書く問題(国語B1設問三)がこれに該当する。

三 調査問題の実際

(1) 調査問題の構成

「知識」の問題(国語A)は、1から8までの大問の中に、計三十七の小問を配した。学習指導要領の三領域一事項全体から、指導事項に対応させて出題している。「知識」という表現が、〔言語事項〕についての出題と理解されがちであるが、三領域一事項からの出題である点に留意することが大切である。問題形式別にみると、選択式が中心になっている。

「活用」の問題(国語B)は、1から3までの大問の中に計十の小問を配した。授業などで取り入れられている言語活動を想定し、場面設定をしながら、複数の領域の指導事項に関する出題で大問を構成している。問題形式についてみると、選択式五問、短答式二問、記述式三問である。

(2) 主な問題の内容

■国語A2「手紙を書く」問題

手紙を書くために必要な知識が定着しているかどうかをみる問題である。手紙の書き方は、小学校や書写の時間でも学習する。「総合的な学習の時間」での地域の方との交流などを通して実際に手紙を書く機会も増えている。

国語科の授業で指導する内容としては、「手紙の書き方」を形式的に教えるだけでは十分とは言えない。頭語や結語がもつ意味を考えさせたり、「後付け」で、なぜ相手の名前を上に書き、自分の名前を下に書くのかを考えさせたりするなど、指導内容を吟味することが授業の改善につながるものと思われる。

■国語B2「蜘蛛の糸」の問題

芥川龍之介の「蜘蛛の糸」全編(約三○○○字)を取り上げ、記述式の問題として、「蜘蛛の糸」の構成について、自分の考えを書くものを出題した。自分の立場を明らかにして、説得力のある根拠を示して書き表すことができるかどうかをみるものである。「読解力」の向上という視点に立って、「評価しながら読む能力」を育てることが大切である。

■国語B3「本の広告カード」の問題

複数の資料を読んで、資料に表れている表現の仕方の特徴やものの見方・考え方を整理する力が身に付いているかどうかをみる問題である。資料に表れているものの見方や考え方を読み取り、読み取った情報を比較・評価し、分かりやすく説明する力は、これからの社会においてますます必要となるものである。



・・・・・・(以下、本誌をご覧ください)