2010.08 AUGUST
特集 気になる「実践用語10」の解明
【巻頭論文】
実践用語から迫る指導改善
尾木和英(東京女子体育大学名誉教授・言語教育文化研究所代表理事)

切り口としての実践用語

見出しに「指導改善」という語を用いた。なじみ深い語だが、実際に取組むとなるとこれが容易なことではない。

「改善」というからには、何をどう改善するかが明確にならなくてはならない。改善すべき指導の道筋について仮説を立て、実際の授業として実施する。実践を通して成果と課題を確かめる。そして、さらなる仮説を構築して実践を重ねることによって改善は現実のものとなる。

しかし、何を目指すか、どう取組むか、どれ一つをとってもそう簡単なことではない。その解明の切り口を与えてくれるのが、実践用語だといえる。

いま、指導改善で目指す「何」にかかわって考察を加えてみよう。

平成一四年一月に文部科学省が示した「確かな学力向上のための二〇〇二アピール」には、およそ次のような意味のことがあげられていた。

(1) 基礎・基本や自ら学ぶ考える力の育成。
(2) 生徒の個性に応じる発展的な学習。
(3) 学ぶ楽しさの実感や学習意欲の喚起。
(4) 補充的な学習や学ぶ習慣の育成。

そこで求められているのは、単なる知識や技術の伝達ではない。基礎・基本の徹底と同時に、主体的に学び学習を自ら展開していく力の育成が求められているのである。ここで取り上げられる実践用語としては、「基礎・基本の徹底」「発展的な学習」「学習意欲の喚起」「学ぶ習慣の育成」などが考えられるが、こうした用語の内容に検討を加えることによって、指導の構想、展開の具体化への示唆が得られる。

いま仮に、生きる力としての言語力育成を根底において「学習意欲の喚起」を切り口とする授業改善に取組むとする。

そこでは、従来から言われていた板書、発問といった指導技術、教材解釈・開発などの力に加えて、生徒の学習課題の設定、指導を構想し、学習活動を組織する力や、指導展開、効果的な評価の実施とそのフィードバックなどが要求される。

生徒はそれぞれ能力・適性、興味・関心等が異なっており、また、知識、思考、技能等も異なっている。生徒が効果的な指導によって主体的に学習を進め、そのことを通して学ぶ意欲を高めるためには、教師はある切り口から、課題に迫る指導を展開しなくてはならない。実践用語はその切り口の役割を果たすといえる。

本誌で取り上げられた用語は、こうした考えに基づき、指導方法の工夫改善にかかわるものとして選ばれている。

実践用語とは何か



(以下、本誌をご覧ください)