一 はじめに
本稿で紹介するのは、同一教材を、同じ生徒たちを対象に、三年間続けて取り扱った実践である。
教材は『走れメロス』(太宰治)である。今回の指導のねらいは大きく三つある。
第一に、ひとまとまりの言語活動を通して各領域の指導事項を系統的に指導すること。第二に、生徒の発達段階における同一作品に対する「読み」の変容を検証すること。第三に『走れメロス』は中学校段階において、何をどこまで指導できる作品なのかを検証し、作品がもつ教材としての可能性を追究することである。
二 学習意欲を喚起する実践上の工夫
一年次
この単元では、文字テクストによって形成された心像に揺さぶりをかける手段として、音声テクストや動画テクストを用いている。「文字テクストを読んだ時には意識しなかったが、朗読を聞くとインパクトのある表現で、イメージが変わった」「動画によるこのシーンはメロスの動きが非常にリアルに表現されているが、文字テクストではそこまでリアルにイメージができなかった。一体文字では何と表現されていただろう」というように、文字→音声→文字、文字→動画→文字というように異なるメディアを横断する学習活動である。生徒自身が心像の変化を自覚し、文字テクストを再読しながら、そこに隠されている表現を「解釈」「選択」することを通して、その広さや深さに気づいていくことをねらった。
生徒たちは、異なるメディアを横断しながら、楽しそうに学習に取り組み、文字言語の持つ豊かな読みの可能性について考えていた。
二年次
(以下、本誌をご覧ください)
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