CDC(米国疾病管理・予防センター)は、「望まない妊娠や HIV を含む性感染症に関係する性行動」を、現代の青少年がとる「危険行動」(自分自身の健康を損ねたり、社会に対して重大な影響を与えたりするおそれの高い行動)の一つとしてとらえ、こうした危険行動を抑制することが、現代社会の健康問題を解決するための具体的戦略になるとしています。
青少年がとる早期の性行動は、若年妊娠や性感染症などの身体的健康問題を引き起こすだけではなく、精神的・社会的健康を損ない、経済的困窮や学業の放棄につながるなど、彼らの QOL(人生の質)に対しても好ましくない影響を与えます。
早期の性行動がもたらすこのような影響の重大性にもかかわらず、我が国の青少年の性行動は1990年代以降急速に活発化、早期化してきており、特に高校生女子においてその傾向が顕著です。そのため、性行動が活発化する前に、効果的な性教育を学校において実施することは、これまで以上に重要視されるべきだと考えられます。
しかし、かつて行われた「過激な性教育」に対するバッシングの影響もあり、多くの学校では性教育を実施することにはためらいもあるようです。こうした不幸な状況を打破するためには、多くの教職員や保護者の理解が得られ、しかも青少年の性行動の早期化や活発化、それに伴う様々な問題を抑制するのに有効なプログラムを開発し、提案することが求められています。
JKYB ライフスキル教育研究会では、こうした課題意識の下に、我が国の青少年の性行動が活発化する直前の中学生期に焦点を当てたプログラムの開発研究に2005年以降取り組んできました。本プログラムの内容は、我が国でこれまでに行われてきた知識伝達型、あるいは脅し型の健康教育の限界を踏まえ、青少年の性行動の関連要因に関する国内外の研究成果に基づいたものです。
私たちは、本プログラムが青少年の性に関する諸問題を解決するのに貢献するだけではなく、全ての青少年が自分らしく有意義な人生を歩む助けとなることを願っています。
平成26年6月
神戸大学大学院人間発達環境学研究科 教授 JKYB ライフスキル教育研究会 代表 |
川畑 徹朗 |
青少年がとる早期の性行動は、様々な形で健全な成長への悪影響につながっていきます。ここ数年、我が国の青少年の性行動は活発化、早期化しており、学校教育の現場において効果的な性教育を行う重要性は、ますます高まっていくと考えられます。
とりわけ、正しい知識を正しい行動選択に結びつけるライフスキル教育の必要性は、多くの知識を持ちながら誤った一歩を踏み出してしまった大人が引き起こす事件報道等を見るにつけ、今後ますます高まっていくと言わざるを得ません。
そのような中、このたび、青少年の健全な育成について研究を重ねている神戸大学の川畑教授を中心とした「JKYBライフスキル教育研究会」が完成させた性に関する教育プログラムが、一冊の本として上梓されることとなりました。
約7年という年月を費やし、実際の授業を通じて完成度を高めたその内容は、極めて実践的なものであり、中学校の教育現場において他に類を見ない、貴重な参考資料として活用できるものであると確信いたします。
本書が、本書の主な対象である中学校の性教育を担当する先生のみならず、今後ますます重要度が増す青少年の正しい行動選択に関わる指導を行う先生を始めとした関係者各位に広く活用されることで、我が国の青少年の健やかな成長の一助になることを願ってやみません。
平成26年6月
公益財団法人 日本学校保健会 会長 横倉 義武
本書付録のCD-ROMには、本書に掲載された教材がPDFファイルの形式(※)で収録されています。
収録内容(ファイルの種類):
「活動シート」「教師用資料」「掲示用資料」「家庭用資料」「生徒用資料」「保護者用アンケート」「授業評価表」
収録フォルダ:
各学年の授業単位ごとにフォルダを作成し、そこに各ファイルを登載してあります。
例)
・フォルダ名「1年「1」」は、1学年の1時間目の授業を表します。
・ファイル名「1-「1」-1」は、1学年の1時間目の授業の1番目のファイルを表します。
免責事項等:
・本CD-ROMに収録しているデータの無断複製は、著作権法上の例外を除き禁じられています。
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