平成7年1月17日,淡路島を震源とする直下型地震により,神戸市を中心に,従来安全とされてきた鉄道,地下鉄,高速道路,港湾施設を損壊,落橋させ,鉄筋コンクリート造建築物を倒壊させるとともに,多数の木造住宅の崩壊や地震に伴い発生した火災により,死傷者5万人を超す被害を出す阪神・淡路大震災が発生しました。
平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震は,日本観測史上初のマグニチュード(M)9.0の規模となり,宮城県北部で震度7を記録したほか広い範囲で震度6強の揺れを観測しました。また,東北地方の太平洋沿岸の広い地域が地震による大津波に襲われ,死者,行方不明者が2万2千人を超えるなど,太平洋沿岸地域を中心に壊滅的な被害を受ける大震災(東日本大震災)となりました。
このほか,熊本県内として観測史上最大の震度7を2回記録し,さらに過去最大規模の地震発生回数を数え,震災としては九州地方最大の被害をもたらした「平成28年(2016年)熊本地震」や,地震による大規模な土砂災害のほか,一時北海道全域にわたり停電するというブラックアウトが発生した「平成30年北海道胆振東部地震」など,尊い命が奪われる大災害が発生しました。 これらの地震災害を受け,また,将来発生が危惧されている南海トラフ巨大地震や首都直下地震への対策として,全国的に新たな被害想定が公表されるなど,国を挙げた防災対策の見直しが進められています。
地震はいつ発生するか分かりません。
このため防災関係機関では,消防法・地域防災計画や条例等に基づいて,管内の事業所に対し,地震に対する備えを消防計画及び事業所防災計画に定めさせ,対策を徹底するよう指導しています。
地震そのものの発生を防ぐことはできませんが,地震時の震動による家屋の倒壊やこれに伴い発生する火災等の被害に対しては,事前の準備と対策,地震時の的確な行動によって,最小限に抑えることが可能となります。
災害発生時には,事業所は従業員とその家族,顧客の安全を確保する責任を有するとともに,地域の防災力として欠かせないものと認識されてきています。
本書は,震災対策の根幹とも言うべき事業所防災計画が各事業所で作成され,事業所の地震に対する備えを進める参考として,活用されることを願い編集したものです。